おかげさまでほっとまむコラムも50回を迎えました。
毎月1回の更新で、50ヶ月=4年2ヶ月!この長さに、今はただ、感激しています。

そこで50回目の記念として、私の子育てを振り返ろうと思います。
子ども3人と最後に私の想いを書かせていただき、4回連載にします。
これから4ヶ月、ゆっくり読んでいただければうれしいです。
                               森本 光由希


vol.51 子どもと一緒に育ってきましたA ふたり目 めぐみ

 

  「兄弟は2人。2学年違いがいいなあ。あかねは3月生まれだから、丸2つ違いだね」
大雑把な計算通り、あかねと1歳10ヶ月違いでめぐみが生まれました。すっきりした顔で
「かわいい!」。余裕のなかったひとり目とは違い、授乳中もまじまじ表情を観察しました。

里帰り出産でした。わが実家は相当古く、私たち3人が間借りする部屋とふすま1枚の隣に
両親が寝る部屋。でも自分の両親なんだから、なんの遠慮もないはず……。ましてやふた
り目は楽だっていうし。のんきに構えていました。

次女めぐみは気難しい赤ちゃんでした。今、13歳の彼女も頑固で意地っ張り。きっと生ま
れ持ってそんな性格だったのでしょう。もちろん、当時はわかりません。よく泣く、よく
ぐずる……。産院から帰ってすぐ、おばあちゃんに抱かれて大泣き。目が見える前から、
私以外は拒絶していました。

長女はおばあちゃん子でしたから、入院中は何とかがんばっていました。が、母が連れて
きた物体を「妹」とは認識できなかったようです。おっぱい中には必ず泣き叫びました。
特に夜中、めぐみが泣いて授乳開始。すぐにあかねが起きだして泣き始める。となりの両
親を起こしたくないから、小声で「静かにして。もう少しで終わるから」。そんな言葉で
泣きやむはずはなく……。「もっとあかねに優しくしてあげないと」そういわれるたびに、
私全部を否定された気分になっていました。

1ヶ月健診を終えると、早速我が家へ。両親にはお世話になりましたが、かなりぶつかりま
した。夫ならもっと気兼ねせずに「使える」はず! 一人なら、好きなだけ泣かせっぱな
しにできる! 我が家に帰り、ほっとしました。きっと両親も。

親への「遠慮」がなくなり精神的にはずいぶん楽になりましたが、2人姉妹の育児はなかな
かうまくいきません。あかねのあかちゃん返りはしぶとく、めぐみのぐずりはずっと続きま
した。

めぐみの離乳食を始めたころ、あかねがパタッと食べなくなりました。昨日まであんなに喜
んで食べていたのに、おかしい。最初は心配しましたが、だんだんいらだちに変わり、たっ
た2歳の子に手をあげる始末。子どもを寝かしつけ、食べ散らかしたままのテーブルで泣きま
した。あの頃が一番たいへんだったなあ。精神的な辛さと呼応するように、人前で見せられ
ないくらい、手が荒れてひどい状態でした。そのかゆみや痛さも、いらいらを増幅させたと
思います。

「このままでは虐待してしまう」真剣に悩みました。自分は鬼母で、私に育てられるこの子
たちはかわいそうだと。夜遅く夫が帰ってくるころは、いつも泣いていたような気がします。
彼はよく聞いてくれました。そして最後に言うんです。「大丈夫。自分が思っているほどひ
どいこともしてない。大丈夫」平日はほとんど子どもと接する時間がなかったけれど、「聞
いてくれる」だけでどれほど救われたか。

私は大人とのコミュニケーションに飢えていたので、なんでも夫に話しました。公園でこけ
た。犬を怖がった。おもちゃを取られて泣いた。些細なこともくだらないことも全部。結果
的にそれが娘たちを何でも知ってるお父さん大好きっ子にさせました。土日は私1人で買い
物に行けるほど。たった1時間でもうれしかったなあ。

その年末、帰省しました。めぐみはもうすぐ1歳。人見知りの一番激しいころです。おじい
ちゃんもおばあちゃんも、夫方のおじいちゃんもおばあちゃんも、枕の違う蒲団も、お気に
入りのおもちゃの少ない生活も、すべてダメでした。あんまり泣くので、夜中にドライブし
たほどです。

年が明け我が家に戻ってきたら、突然、めぐみがあかねと遊び始めました。慣れた我が家に
安心したのか、もう母べったりから卒業したのか、理由はわかりません。私はうれしいより
ビックリ! めぐみが遊び始めると、あかねが急にお姉ちゃんになりました。あかちゃん返
り卒業です。こうして急に、穏やかな生活が訪れたのです。

めぐみは今でも、若干人見知りですごく内弁慶です。友だちも多い方ではありません。それ
に頑固で意地っ張り。私の性格に一番似ていると言われます。小さなころは高いところが怖
くて滑り台にも上れなかったし、公園でも友達がいると思い切り遊べないし、「将来、大丈
夫だろうか?」と心配しました。でも、今のめぐみは案外大丈夫。楽しい中学生ライフを送
っています。あのころ「成長」を信じて、もっと穏やかにのんびりしておけばよかった。今
となってはそう思います。そしたら、育児ストレスも少しはマシだったかも。

私が悪戦苦闘しているのを見て、義母が「女の子を産んでくれてありがとう」と言ってくれ
ました。男4人の子育てで苦労した義母は「2人がいいよ」と。私たち夫婦ももっと遊びたか
ったので「じゃ、これで終わり。あと2年したらキャンプに行こう!」などとのんきに計画
を立て始めました。めぐみが用済みになったベビー用品はすべて処分して。
「早く大きくなあれ、めぐみ。あかねと一緒に、これからいっぱい出かけようね」

体調の変化に気づいたのは次の夏。末っ子には申し訳ないけれど、受け入れるまでかなり時
間がかかったのです。「もう一度、あの大泣き育児をするの?」

あかね3歳。めぐみ1歳。2人姉妹の母である私、だったはず……。


                                                    BACK   HOME